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植物にまつわるトーク  東信 × ケイティー・スコット

「ボタニカル」をテーマに、フラワーアーティストの東信さんとイラストレーターのケイティー・スコットさんがコラボレーション。東さんがつくった花束に、ケイティーさんがさらなる命を吹き込みます。銀座メゾンエルメスで行われた、植物にまつわるトークで、作品に込められたそれぞれの想いをお届けします。

多様性のある花を束ね、
好奇心で描く。

ケイティー 私が初めてエルメスのスカーフ“カレ”をデザインしたのが7年前でした。また、東さんと最初に仕事をしたのも7年前になります。7年経って、今回の「ボタニカル」をテーマに私たちが再びご一緒できるのはうれしいことですよね。東さんの花のチョイスやアレンジはとてもエキサイティングでしたが、ここで東さんが表現しようとしたことって何ですか?

東 銀座メゾンエルメスやエルメスのイベントの花を手がけて約20年以上経ちました。今回のプロジェクトではただ単に美しい花を僕がつくって、ケイティーが描くというだけではなく、花が持つ意味や内面性、さまざまな国の花の多様性など、普段僕が花を束ねるだけでは伝えきれないことを、ケイティーのイラストでより具体的に表現できるといいなって考えました。

ケイティー お店に入ればさまざまなスタイルのスカーフが並んでいますが、それらには、好奇心や、明るさ、ほがらかさがあって、百聞は一見にしかずと言いますが、やっぱり見るとエルメスのスピリットってじわじわと伝わってくるものなんです。今回でいえば、それは花への探究心。ただ美しいものを描くのではなく、その内面や不思議な側面を見せることが、好奇心につながるのだと私も考えました。東さんは今回なぜこの花々を選んだのかしら?

ふたりが作品で
表現したかったこと。

東 花の種類に多様性を求め、ひとつの地球をつくってみたかったんです。暖かい国の花、寒い国の花、乾燥した国の花、湿度の高い国の花といった日常では絶対に隣り合わない花の取り合わせが表現できるように、さまざまな植生の中からこれだと思うものを選びましたね。たとえば、暖かい国の花だったらストレリチアやクロコスミア。寒い国原産であればオニユリやポピーなどです。

ケイティー さまざまな地域の花を使っているだけでなく、形も多様だなって思いました。私のイラストでもあえて曲げたり、ひねりを加えたり、大きさを変えてみたりしたんです。

東 ケイティーが描いてくれた花は、いつもそうなんだけど、美しいだけじゃなくて、花の強さだったり、弱さだったり、花のいい側面だけではなくて、みんながあまり見たくないような部分まで描いていて、そこに僕も共感します。

ケイティー 花の一見醜いと思われる部分でもエルメスにかかれば、不思議な側面、もしくは好奇心という言葉で表せますからね。

東 僕は仕事柄、植物図鑑を眺める時間が長いのですが、図鑑というのは過去を見ている意識でした。でも、ケイティーが以前描いた植物図鑑を見たときに、すごく未来を感じたんです。自身の考え方や想いみたいなものが、絵に乗り移っているって。今回は普段からふたりでやっている作業の完成形というか、ひとつの絵の中でストーリーが完結するような作品になりましたね。

パリ・フォーブルと銀座にある
屋上庭園で感じたこと。

東 ケイティーはパリの1号店の屋上庭園を訪れたことはある? それに比べてこの銀座の屋上庭園はどう?

ケイティー パリのフォーブルの屋上庭園は、ある午後に庭を回って庭師のヤスミナさんから植わっているものを教わりました。花は白を基調に整えられていて素敵な印象でした。カラーパレットが抑えられていることで、草木の緑や質感が逆に際立っていたと思います。銀座は、パリとは異なり、直線的に草木が並ぶなかに、果物の色合いがポツポツと現れる。ガラスブロックが温室のような雰囲気で、オープンガーデンのようでもあり、とても気持ちのいい空間ですね。

東 パリにリンゴの木があるように、銀座にはミカンやレモン、リンゴなどの木が植わっています。ただ花が咲くだけじゃなくて、そこから実になって、それを皆に分け与えるといったイメージ。ただ見るだけの庭ではなくて、そこに物語があるのがすごくエルメスらしいなと。庭ひとつにもフィロソフィーがあるのだと思います。

ケイティー 誰もパリや東京の中心地の屋上に、生き生きとしたリンゴの木やミカンの木が植わっているなんて思わないですよね。

東 銀座はパリのような草木の豊かさというよりも箱庭的で、池を模した水盤には空が映り込み、1本のもみじの木がシンボル的に植わっていることで季節を感じられる。レンゾ・ピアノの建築物といいコントラストになっているのも僕は好きですね。

Azuma Makoto

東信

フラワーアーティスト。南青山にオートクチュールの花店『ジャルダン・デ・フルール』を構える。海外を中心に個展を開催するほか、実験的植物集団「東信, 花樹研究所(AMKK)」を立ち上げ活動。これまで銀座メゾンエルメスやエルメスのイベント、また銀座メゾンのウィンドウディスプレイでも植物をテーマにした展示を手掛けている。

Katie Scott

ケイティー・スコット

ロンドン拠点のイラストレーター。手描きの線描画やデジタル水彩画などの作品があり、植物の要素や解剖学からインスピレーションを得ている。植物学者とのコラボレーションで植物図鑑も制作。エルメスのカレやテキスタイルでも植物を表現したデザインで知られる。

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