Secrets of GINZA
MAISON HERMÈS
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本の秘密
エルメスにとって、はじめての、そして唯一の社史が漫画というのは、ご存じない方も多いかもしれません。本格的に乗馬をたしなむ漫画家の竹宮惠子先生にお願いした、その名も『エルメスの道』(1997年出版)では、日本の文化を愛したジャン=ルイ・デュマ(5代目社長)が独自の表現として見出した“漫画”をとおして、1837年に創業したメゾンの長い歴史が描き下ろされました。2021年には、続編として「銀座メゾンエルメス誕生」「ソー・エルメス開催」「プティ・アッシュ立ち上げ」の物語3編を加えた新版『エルメスの道』(中央公論新社)が出版。ここ、銀座メゾンエルメスも社史の大切な一話となりました。
そして一昨年にははじめてエルメスの絵本が出版されました。子どもたちにものづくりの楽しさを伝えたいという思いから描かれた『エルメスのえほん おさんぽステッチ』(2022年、講談社)は、カラフルな作画が特徴的な2人組のアーティスト、100%ORANGEが物語から挿画まで手掛けました。フランス各地にあるエルメスのアトリエを訪れ、サヴォアフェール(職人技)の世界を体験し描かれた作品は、手でものをつくる楽しさや喜びが溢れ出ます。シルク製品をつくっているアトリエでは、色数分の版をつくりプリントを重ねるシルクスカーフ、カレの制作過程を見学しました。はからずも、絵本がつくられる工程、技法とほぼ同じであることに驚いたそうです。
そうそう、漫画『エルメスの道』では、サイドストーリーや小さなエピソードが詰まった吹き出しにもご注目を。絵本『おさんぽステッチ』には、ちょっとしたサプライズな仕掛けもあるんです。これらの本が、これから先もたくさんの人たちの手に渡ることで、歴史や職人技の魂、ものづくりの楽しさやそれを分かち合う喜びといったものが、みなさんの心に届くことを願っています。