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STORY
音をオブジェに
夢を叶える
ものづくり
Axel de Beaufort
アクセル・ドゥ・ボーフォール
アトリエ・オリゾン
クリエイティブディレクター
2月は、銀座メゾンエルメスがジュークボックスに変身します。ミュージシャンの生演奏に、ジュークボックスが鳴らすポップチューンで、心も躍りはじめます。運び込まれたジュークボックスは、アトリエ・オリゾンというスペシャルオーダーを手掛けるアトリエで製作。手掛けたのは、オリゾンのクリエイティブディレクター、アクセル・ドゥ・ボーフォール。
音の世界に足を踏み入れる
――ボンジュール、アクセル
アトリエ・オリゾンへようこそ。クリエイティブディレクターのアクセル・ドゥ・ボーフォールです。アトリエ・オリゾンは、エルメスでは普段取り扱わないようなコレクションや特別な企画を実現する夢のようなアトリエです。
――さあ、音の世界へ
私たちは音の世界への扉を開くためにジュークボックスやブームボックスをつくりました。ブームボックスはポータブルなレコードプレイヤーです。これらの開発から6年たち、今では最先端の音響機器をエルメスからお届けできるようになりました。私たちが今つくっているポータブルスピーカーは手のひらサイズです。この小さなスピーカーを箱の中にいれると大きなスピーカーになります。エルメスのバッグでおなじみのハンドルに、現代的な革のタッチセンサー。触れるだけでスマートフォンのように反応します。これは、みなさんにお届けするために準備中のスピーカーです。
――音にまつわるものづくり
DJテーブルはフランスの家具職人が手がけた木製のストラクチャーで、素材に使われているのはマホガニーとカウスキン。ターンテーブルは日本でつくられています。プリンス・チャールズというイギリス人DJと共同開発していますので、DJが十分にプレイできるものに仕上がっています。
ジュークボックスも素晴らしいものに仕上がりました。私たちの特別な工房であるアトリエ・オリゾンで、革はスマートフォンのタッチスクリーンのように、ガラス台はイタリア・ヴェネツィアのムラーノでつくられたものを使い、そこにエルメスならではのレザー職人の特別な技を駆使してつくられました。新しい可能性を追うことで生まれた、LPレコードを聴くためのジュークボックスです。
――どんな曲を聴きたい?
私ならフランスのバンド La Femmeのアルバム『Psycho Tropical Berlin』をかけますね。私にとってジュークボックスといえばこの曲なんです。
――細かいこだわり
ジュークボックスの内側の側面には、アナモルフェによる《騎上のパースペクティブ》のデザインを取り入れ、レザーのパッチワークでモチーフを描くマルケトリーという職人技が使われました。
また、今回は《シュヴァロスコープ・ネオン》というスカーフのグラフィックを手がけたエリアス・カフロスとのスペシャルバージョンをつくりました。エリアスのデザインにうまく調和できるようなネオンカラーの管を探したのもとても楽しい経験となりました。ジュークボックスはこれまで50台ほど製作しました。はじめは1つ、2つくらいの製作予定でしたが、これほどまでにつくれたのはお客さまたちにエルメスのものづくりをしめすような強いDNAを持ったオブジェ(ジュークボックス)を気に入っていただけたおかげです。ジュークボックスはもちろん、ブームボックスやDJテーブル、これから登場するスピーカーなどもそうですね。私たちは長くつづくであろう壮大な物語の一歩を踏み出しました。現在、私たちは日本向けのジュークボックスをつくっていますよ。
――日本を想う
東京に行くのは大好きです。常に楽しい時間を過ごせ、魅力的な人々と出会えます。ミュージックバーにはフランスにはない活気があります。いいものに囲まれ、ゆっくりと音楽を聴いていると創作意欲がかきたてられ、私たちオリゾンにも多くのインスピレーションを与えてくれるのです。以前、東京で小さな車輪の細長い自転車にインスピレーションを得て、木製自転車を製作したこともありましたよ。日本人のものの捉え方は興味深いものがあります。細やかな配慮があり、精度が高い。そして、とても正確です。私たちエルメスにとてもよく似ていると思います。
Axel de Beaufort
アクセル・ドゥ・ボーフォール
アトリエ・オリゾン、クリエイティブディレクター。ヨットのデザイナーとして活躍後、スペシャルオーダー専門の工房、アトリエ・オリゾンのクリエイティブディレクターを務め、専門メーカーとの共同開発などを手がける。
Photo credit: Alexis Armanet