銀座メゾンエルメス1階の香水売り場には、さまざまな香りの物語が並びます。意外な素材同士の組み合わせから思いがけない香りは生まれるものですが、そうした香りのインスピレーションは、実はこの銀座メゾンエルメスにも漂っているのです。2階のカフェではほんのり刺激的なハーブやスパイスの香り、屋上庭園では爽やかな柑橘類の香りが、そのほか各フロアにはシルクやレザーなどオブジェの素材そのものの香りで溢れます。

たとえば、レザーの香りと聞くと、香水との結びつきに驚かれる方がいらっしゃいます。エルメスの調香師クリスティーヌ・ナジェルは、レザー保管庫を訪れた際、ドブリスというスエードレザーに宿るなめらかな手触りと気品に気がつきました。ふんわりやわらかなレザーをイメージした香りには瑞々しいローズをパートナーとし、疾走する馬の躍動感を表現したのが《ギャロップ ドゥ エルメス》。対極にあるふたつの素材、ローズとレザーが絶妙なバランスで互いを惹き立て合う香りとなりました。そのボトルも鐙（あぶみ）のフォルムにかたどられているのは、お気づきになりましたか？