動画を見る

STORY

フォーブルの

コンシェルジュ

Thomas Collette

トマ・コレット

パリのフォーブル・サントノーレ店 店長

今からほぼ100年前に現存の姿ができあがったパリのフォーブル・サントノーレのエルメス第1号店。今月のテーマ「フォーブル」を掘り下げるのにぴったりな人物、フォーブル・サントノーレ店店長のトマ・コレットが、フォーブルに棲みつく魂の正体に迫ります。

エルメスが息づく場所。

――フォーブルは迷宮?

フォーブルで長い時間を過ごすことでわかったのは、この建築は他に類を見ないものだということです。お客さまもそれを求めてこのお店にやってきます。というのも、フォーブルの設計は店のつくりとして前後逆なんです!今日的な新しい店舗とはまったく異なり、迷宮に迷い込んだような感覚を楽しめます。さらには、店内の壁のアート作品ひとつから、フォーブルの歴史を感じとったり、その息吹を味わうことができる。フォーブルは素晴らしいカオスです。このカオスな側面を、常識を超えるような、生き生きとしたものにするのが私たちの役目なのです。

©️Benoît TEILLET

――フォーブルは発見の連続。

現在のフォーブルはある意味狂った機械に例えられます。店に足を踏み入れると、目の回る洗濯槽に入ったような感じになるのも、どこを向いても常に何かが起きているから。しかし、ふとした瞬間に視線を止めてみると、何か目を楽しませてくれるものが必ずあるのです。なので、フォーブルを訪れた際には、複雑な建物の内部をぜひ歩き回ってみてください。今でも私は何かを目にして足を止めてはこう言います。「なるほど、この視点、あのディテールは初めて見た……」と。

©️Thibault BRETON

――フォーブルはタイムマシン?

とりわけ面白いのは、壁には絵画や装飾といったたくさんの作品が飾られていることです。風変わりなものもありますよ!かなりの年数を経た作品を最新の製品と並べるようにディスプレイすることもあるのですが、すべてが一体となり共存できるって素敵じゃないですか? 過去と現在のオブジェの間に、本物のシナジーが生まれるのです。これは歴史あるフォーブルならではの特別なことだと思います。

――フォーブルをつくる人々。

「フォーブルの魂」に命を吹き込むこと。それは、バランスのとれた「フォーブルのモザイク」をつくることです。フォーブルで47年間ずっと働いてきた人も、働き始めて1ヶ月の人も、誰もが共存できることが大切です。私たちが受け継いできたことを、次世代に渡すことができるように。ここで、10年、15年、20年、30年と働いていると、たくさんの物語や逸話を耳にします。こういったことも伝えていかなければなりません。ある意味、エルメスが受け継ぐ遺産の一部ですからね。

©️Studio des fleurs

――フォーブルでの好きな時間。

もっとも好きな時間は一日の終わりです。私にとっての一日の終わりとは、閉店前の30分間。その間は店舗に居られるようにしています。一日がどうだったのかを理解し、感じとり、チームと話し合い、お客さまにお会いするための時間です。店内ではまだいろいろなことが起きていて、ドラマチックでありながら、もうすぐ幕が下りる気配が漂います。そして、閉店後の店舗には独特な空気が流れます。空っぽになった店には強烈な非日常感が漂っているんですよ。

――フォーブルの魂を感じる場所。

私がお店に居るときは、いつも店の真ん中を貫く螺旋階段の下にいます。フォーブルを訪れた際には、のぼったり降りたりすることになるあの螺旋階段です! 右に紳士服を望み、左手には手帳カバーが並び、後方に婦人服が見えるところです。馬具コーナー、入口のドアに上階と、ほぼ360度目に入ってきます。ここに居ると、私は「フォーブルの魂」を感じることができるのです。

――フォーブルの記憶。

クリスマスの時期になると、クリスマス直前まで働いているスタッフたちでクリスマスキャロルを歌います。これは昨年もやりましたが、12月23日の午前10時20分にみんながドレスアップして集まり、歌い、踊りました。もちろん、フォーブルについての歌を歌うのです。ちょっとだけ歌詞を変えてね。

©️Dolorès MARAT

Thomas Collette

トマ・コレット

パリのフォーブル・サントノーレ店、店長。勤続は20年以上で、店長としては5年目。ジョンロブのヨーロッパ、中東、インドのコマーシャル・ディレクターを経てエルメスに。シンガポールで駐在経験があり、中東および東南・南アジア各地を担当。リテール部長としては3年以上務める。

Photo: Olgaç Bozalp

TOPにもどる

端末を縦にしてご覧ください