時間の廻りを体験した
「フォーラム」での24日間

向井山朋子 ピアニスト・美術家

©︎ Kiyoaki Sasahara / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès

異世界へ連れていってくれる
エレベーター

帰国するたびに訪れる「フォーラム」へ行くには、ソニー通り沿いに面したエレベーターで上がります。中にはアテンドする方が乗っていて、行き先の階のボタンを押してくださいます。小さなエレベーターが連れていってくれる先、8階の空間は展覧会によって毎回驚くほど違う場に変容していて、いつも楽しみです。まるで異次元の世界に連れていってくれるように上昇するあのエレベーターが大好きです。

都会の真ん中に
しのびこむ野生の気配

2019年2月に「フォーラム」で24日間連続のピアノパフォーマンスをベースとした展覧会「ピアニスト」を開きました。
演奏はトイピアノからグランドピアノまで約20台の楽器からなるインスタレーション“ピアノの森”の中で、毎日1時間ずつ開演時間がずれてコンサートが始まるので、中盤では真夜中のコンサート、そして早朝の回、と24時間の周期を一巡りするコンセプトでした。
深夜にはビルのネオンや街灯も消えて「フォーラム」に真の闇が迫り、また夜明けの回では、ガラスブロックを通して薄明かりが温度の変化のようにじんわりと差してきました。
ともに過ごしたスタッフチーム、そして何より観客には過酷な24日でしたが、私たちがあの空間でともに体験したのは、ゆっくりした時間の廻り、都会にいながら感じられる野生的なエネルギーだったでしょうか。レンゾ・ピアノの銀座メゾンエルメスはコンテンポラリーなデザインであると同時に、自然のダイナミズムを内含した稀有な建物だと思います。

©︎ Kiyoaki Sasahara / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès

Tomoko Mukaiyama

向井山朋子

ピアニスト・美術家。オランダ・アムステルダム在住。1991年ガウデアムス国際現代音楽演奏コンクール優勝。ソリストとしての活動のほか、インスタレーションや舞台作品を発表。2019年に「フォーラム」にて個展「ピアニスト」開催。
Photo: Takashi Kawashima

銀座メゾンエルメスの
フラヌール体験記

もどる

端末を縦にしてご覧ください