うつろう色を発見する

フランシス真悟

アーティスト

銀座の街に出現する
発光するビル

有楽町駅から銀座メゾンエルメスに向かうとき、特別な存在感を放つガラスブロックのビルが見えてきてワクワクします。建物に入る前から視覚の体験が始まっています。ビルなのに鉄や石やレンガなどの硬いイメージがなく、透明感があり、軽やかなんですよね。ガラスブロックを通して自然光を中に取り込み、そしてまたビル自体が光を外に放つ。時折、アーティストのためのキャンバスにもなる。そんなビルは他にないでしょう。ビル内の活動を充実させるだけではなく、街にどう影響を与えるかというアーバン・プランニングの思想で建てられたことが伝わってきて感動します。

ソファのある一角の
色彩のコンポジション

地下のメンズフロアの、ソファのあるコーナーで、カーペットに落ちるテーブルの影に目がとまりました。グレーのふちから中央の明るいイエローへとグラデーションになっているオーバル型のカーペットの上に、スポット照明に照らされたローテーブルの暗い影が幾重にも重なり、それがまるでカーペットの模様のように色彩のコンポジションをなしています。この一角を眺めるだけで、なんとも豊かで美しい体験をした心持ちになるのです。

ショーケースに映り込む
蜃気楼のような風景

レザー製品のフロアで、オーバル型のガラスケースの曲面に、周囲のガラスブロックのグリッドがぐにゃりとゆがんで映り込んでいて、まるで抽象アートのようで面白いです。目的なくぶらぶらと店内を歩いていると、こんな思いがけない景色に出会えるんです。

Shingo Francis | Heart of the Blue Sun
Photo: Keizo Kioku | Private Collection
Courtesy of MISA SHIN GALLERY

外部空間とアートとの
関係性が生まれる場所

8階アートギャラリー「フォーラム」での展示は忘れられない思い出です。2フロア分の高さのガラスブロック壁の横の白壁一面に、方形と円の色層の壁画を現場で一発勝負で描きました。真横からガラスに拡散されて入ってくる外光が作品を照らし、天気や時間帯によって、また観る人の位置によって淡いピンクやイエローのトーンが微妙に変化しました。晴れた風のある日、外に吊るされた新宮晋さんのステンレス彫刻が動くと、その反射光が作品の前の床にキラキラと散らばって実に美しかった。こうして作品と外部空間との間に関係性が生まれることが嬉しく、またそれを可能にしてくれる特別な空間だと感じました。

Shingo Francis

フランシス真悟

アーティスト。1969年生まれ。ロサンゼルスと鎌倉を拠点に活動。代表作に色彩のモノクローム作品やさまざまな光と色彩が現れる絵画『Interference』シリーズなど。2023年「フォーラム」でのグループ展「インターフェアレンス」に参加。

銀座メゾンエルメスの
フラヌール体験記

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