地球の未来に
思いを寄せるための装置

新宮晋

アーティスト

人類最高の作品を
宇宙に捧げる

今から23年前、銀座メゾンエルメスが建設される時、建築設計を手がけた旧知の建築家レンゾ・ピアノからの依頼で製作したのが、彫刻作品『宇宙に捧ぐ』でした。今も変わらず、ソニービル通り沿いのピロティの上方で風を受けながら回転し、キラキラとした光の反射を周囲に投げかけています。亡き5代目社長のジャン=ルイ・デュマさんが常々、私に語っておられた「エルメスは人の手による最高のオブジェを作る」という言葉に触発されて、人類最高の作品をはるか宇宙のかなたへ捧げようという意思を込めて『宇宙に捧ぐ』というタイトルをつけました。

この彫刻は
建物の飾りではない

レンゾは「僕の建築にアートは不要だが、新宮の作品は別だ。そこには機能と動きがあり、スペースを豊かなものにしてくれる」と言ってくれました。ですからこの作品は建物の装飾などではありません。風や光や重力など自然エネルギーによって動く彫刻を通じて、都会の真ん中にも自然の原理は存在するということを証明している装置なのです。地球は豊かな自然環境に恵まれた素晴らしい星なのに、人類は自らの手でそれを滅ぼそうとしている。そのことを、この彫刻を見上げる機会がありましたらぜひ思い出していただきたいのです。

©Stirling Elmendorf

Susumu Shingu

新宮晋

アーティスト。1937年生まれ。東京藝術大学絵画科卒業。風や水や引力を動力にする彫刻作品は世界中の美術館や公園、街角に設置されている。2000年〜2001年、世界6ヵ所に作品を巡回させるアートプロジェクト「ウインドキャラバン」を実施した。

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