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独特な作品セレクトの
40席のミニシアター
奥山大史
映画監督
2021年にエルメスの短編ドキュメンタリーフィルムシリーズ『HUMAN ODYSSEY―それは、創造を巡る旅。―』の総監督をやらせていただきました。オンライン配信がベースでしたが、銀座メゾンエルメス10階のミニシアター「ル・ステュディオ」でも上映されました。ネット配信が主流の時代ではあるけれど、大きなスクリーンを大勢の人と一緒に見つめ、その世界を共有することの醍醐味を失いたくはないです。ここは座席数がわずか40席の本当に小さな映画館。上映後のトークショーをした際には、来場した方々と一緒に作品について考えたり語り合ったりすることができ、その親密な雰囲気は小さなハコだからこそだと思いました。
往年の映画にぴったりの
スクリーンの比率
古い時代の映画を現在の一般的な映画館で上映すると、スクリーンが横長すぎるので左右が余ってしまうことが多いです。ところがここのスクリーンは縦横比が4:3ぐらいと幅が狭く、昔の映画の上映にはぴったりなんです。エルメスの年間テーマに沿って選ばれる上映作品には旧作も少なくないのですが、それを想定してスクリーンをこのサイズにしたのではないでしょうか。
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「ル・ステュディオ」がオープンして以来、2023年までに上映された280作余のタイトルと写真が並ぶボードを眺めていると、僕が好きなタイプの作品が多くて嬉しくなってしまいます。トラン・アン・ユン監督の『青いパパイヤの香り』(1993)、リチャード・リンクレイター監督の『ウェイキング・ライフ』(2001)、ヤン・シュヴァンクマイエル監督の『対話の可能性』(1982)......独特なセレクションからは、エルメスの年間テーマとの安直な結びつきではない、作品に対する解釈の深さが感じられます。
映画マニアはもちろんのこと、いつかエルメスで買い物をしたいなぁと夢見ている若い人たちが、まずは気軽にこの場所に足を運んで、思いがけない映画と出会ってくれたら嬉しいですよね。予約さえできれば、無料で非日常の世界にフラヌールできるのですから。
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Hiroshi Okuyama
奥山大史
映画監督。1996年生まれ。2019年『僕はイエス様が嫌い』で長編監督デビュー。最新作『ぼくのお日さま』が2024年カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクションに日本作品として唯一選出された。同作は9月6日(金)より公開。
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