自己紹介をお願いします。
私はペリーヌ・ブーディ、30歳です。ブリュッセルを拠点にドローイングや陶芸作品をつくっています。パリの大学で法律を専攻した後、ニースに移って美術を学びました。エルメスとの初めてのプロジェクトは2025年6月、フランス南東部はムジェーヴにあるエルメスのお店のウィンドウディスプレイでした。今回、銀座メゾンのウィンドウで2回目のコラボレーションになります。日本に来るのは初めてでしたので、とても楽しかったです!

描き直せない1本の線、
そこに醍醐味がある
Perrine Boudy
ペリーヌ・ブーディ
私はペリーヌ・ブーディ、30歳です。ブリュッセルを拠点にドローイングや陶芸作品をつくっています。パリの大学で法律を専攻した後、ニースに移って美術を学びました。エルメスとの初めてのプロジェクトは2025年6月、フランス南東部はムジェーヴにあるエルメスのお店のウィンドウディスプレイでした。今回、銀座メゾンのウィンドウで2回目のコラボレーションになります。日本に来るのは初めてでしたので、とても楽しかったです!

私が何かを視覚的に語るためのひとつの表現手段です。塗り直すことができるペインティングとは違って、ドローイングは線を1本描いたら、それをもう消せませんし、まっすぐな線をあとから曲げることもできません。そこにドローイングの醍醐味があるように思います。
それから、異なるメディウムをつなぐ役割もあると思います。たとえば陶芸作品をひとつの空間に置くとき、壁に直接ドローイングすることで、陶芸作品と空間をつなげてくれます。
また、自分のアイディアをまとめるためにドローイングは重要です。陶芸作品をつくるにしても、最初は紙に描いたデッサンから始まるのです。

今年のテーマが「ドローイング」なので、紙に水彩と墨で描くことにこだわりました。それをスキャンして拡大し、3次元空間に展開しました。
タイトルは「イタリア庭園の馬たち(Horses in the Italian Garden)」です。子どもの頃、祖父が住んでいたモナコの北にあるラ・チュルビという小さな村に遊びに行った思い出や、地中海文化や古代ギリシャ・ローマ文明への憧れ。古本屋で出会ったイタリア・ルネサンス様式の庭園の本などに多くのインスピレーションを得て、このテーマにたどりつきました。古代の神殿を思わせる円柱や、庭園に点在する馬の胸像彫刻、灌木の茂みのあいだを散策するような世界をウィンドウの中に作り上げました。

一方で、私は20世紀半ばに挿画や舞台装飾で活躍したクリスチャン・ベラールやジャン・コクトーなどにも惹かれます。ファインアートと装飾芸術が交差している彼らの作品に共感を覚えますし、そのことが今回のウィンドウディスプレイ制作にも生かされたと思います。
ペリーヌ・ブーディが手掛ける銀座メゾンエルメスのウィンドウディスプレイ「イタリア庭園の馬たち」は2025年12月9日(火)まで。
エルメスといえばまずスカーフのカレを思い浮かべますが、それはまさに優れたドローイングの宝庫ですね。それだけでなく、皮革製品も家具も、食器も、すべての製品はドローイングがベースとなってつくられるという伝統があると思います。またブティックには馬にまつわる銅版画や素描などがあちこちに飾られていますね。そのことからも、ドローイングがエルメスにとっていかに重要であるかが伝わってきます。


Perrine Boudy
ペリーヌ・ブーディ
1995年生まれ。ブリュッセルを拠点とするマルチメディアアーティスト。パリ第11大学で法律を修めた後、ヴィラ・アルソンで美術を学ぶ。ドローイングをベースとしながらもセラミックアートや大型の壁面作品などを手掛ける。古代ギリシャ・ローマ文明やアニメーションからインスピレーションを得て創作する。2025年、エルメスのムジェーヴ店につづき、10月から銀座メゾンエルメスのウィンドウディスプレイを手掛けた。