自己紹介をお願いします。
私の名前はイ・ギュテ、韓国に住んでいます。私はものや空間を目で見て理解し、それを私なりのやり方で表現するのが好きです。今回、エルメスのプロジェクトに参加でき、思いがけず喜びに満ちた体験となりました。
自分の考えを秩序立て、
内面を見つめる手段
Lee Kyutae, aka Kokooma
イ・ギュテ(コクマ)
私の名前はイ・ギュテ、韓国に住んでいます。私はものや空間を目で見て理解し、それを私なりのやり方で表現するのが好きです。今回、エルメスのプロジェクトに参加でき、思いがけず喜びに満ちた体験となりました。
子供の頃から絵を描くのが好きでした。大学ではアニメーションを学び、それ以降、描くことは私の生活の一部になりました。私にとって描くとは単にスキルのことではなく、自分の考えを秩序立てたり、内面を見るための方法なんです。描くことを通して、世界も、自分自身もよりよく理解できると感じています。
記憶の中にある初めて描いたものといえば、マンガの模写ですね。自分がイメージするところに正確に線を引くことに夢中になりました。それはまるで美しいパズルのピースをひとつひとつはめて完成させるように、線の正しい角度や長さを見出すことでした。その頃から、線とはただものの形状を表すだけでなく、動きや感情や意図を伝えるものなのだと認識していました。
最近、もっとも意義深い仕事をしたなぁと思うのは、エルメスとのコラボレーションで描いたアニメーションです。毎日1コマずつ描いたんですよ。明確な趣旨に基づいて最終的な絵に向かってスピーディーに進む通常のアニメーション制作とは異なり、エルメスのために描いたアニメーションは徐々に方向性が見えてくるものでした。時間をかけてコマを積み重ねることで、物語が生き生きと動き始め、予期せぬアイディアが生まれます。最初のコマから最後のコマまで、まるで絵そのものが私を導いてくれるようで、それは静かな発見に満ちたプロセスでした。
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銀座メゾンエルメスの建物の存在を知った時、その美しさに魅了されました。まず時間をかけて建物の隅々を、ガラスブロックのひとつひとつをじっくりと観察し、私が受けとめた印象を青いボールペンで少しずつ描き起こしていきました。建物内部のほのかな照明がランタンのようにガラス越しに輝き、街並みをやさしく照らしています。私がもっとも心奪われたのは、ガラスブロックが建物の内外にあるものの形をやんわりと屈折させ、静謐でありながらも魅惑的な歪みを生み出している光景でした。光とフォルムの柔らかな戯れが、この絵の核心となりました。
残念ながら銀座メゾンエルメスは写真を通してしか見ておらず、訪れたことはないのです。今度日本に行く機会があったら、ぜひ立ち寄ってこの素晴らしい建物を目に焼き付けたいです。美しいものを大切に守り続けるという行為そのものに美しさが宿っていると信じています。
Lee Kyutae, aka Kokooma
イ・ギュテ(コクマ)
韓国芸術総合学校映画・テレビ・マルチメディア学部アニメーション学科を卒業し、イラストレーター、アニメーションディレクターとして活躍。近年の個展に「MOMENTS OF WSNDER」(Gallery Nucleus ロサンゼルス、2022年)など。『Here Winter』『The Big Boy』『Each Other』などの短編コミックやアニメーションを制作。