どんな言語でも
      読むことができる物語

      Alice Charbin

      アリス・シャルバン

      自己紹介をお願いします。

      私はアリス・シャルバン。パリでイラストレーターとして30年以上活動しています。児童書や大人向けの書籍、新聞や劇場のための仕事のほか、エルメスのためにもイラストを描いてきました。エルメスの亡き5代目ジャン=ルイ・デュマ氏はユーモアと好奇心に満ちた人で、創造的な物語の語り手であり、美術学校を卒業したばかりの私に、エルメスの工房でスケッチを描く仕事を任せてくれました。私が最も影響を受けたフィリップ・デュマは卓越したデザイナーであり、エルメスの精神と記憶を守る存在です。長きにわたって、エルメスとの豊かで刺激に満ちた関係を続けてこられました。

      ©︎ Alice CHARBIN

      あなたにとって「ドローイング−描く−」とは?

      絵を描くことは、外の世界を見つめること、自己の内面に注意を向けること。目で理解したものを書き替えること。どんな言語を使う人でも読める表記法だと言えるでしょう。

      ©︎ Alice CHARBIN

      いつから描いていらっしゃいますか?

      幼い頃から描いています。父のアトリエで、彼の机のそばや膝の上でよく絵を描いていました。私たちが夢や冒険の話をすると、父は紙を折り畳んで小さな冊子をつくり、そこに私たちが話したことを絵と文章で描いてごらん、と促したものです。

      今回「ランタンエルメス」のために描いてくださったドローイングについて教えてください。

      ©︎ Alice CHARBIN

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      この絵は、「ドローイング」つまり物語を語ることに共鳴したものです。私は物語を読むこと、聞くこと、語ることが大好きです。言葉を通じて冒険や感覚や感情や色を共有することができます。

      2001年に銀座メゾンエルメスが竣工したとき、そのオープニングに参加するという素晴らしい機会をいただきました。それは私にとってはじめての日本訪問でした。人々の優しさ、礼儀正しさ、繊細さに感激しました。地下鉄、公園、街並み、オブジェ、食べ物、市場などすべてが魅力的でした。そして銀座メゾンエルメスの建物の、温かくも神秘的な、ポエジーに溢れた美しさ――屋上庭園や、ガラスブロックで造られたランタンのような外観をよく覚えています。火のそばで星空の下、大切な人たちと語り合うことほど素晴らしいことはありません。それがたとえ大都会の中であっても、夢見ることはできます!そんな情景を描こうとしたのがこの絵です。

      私は古い世代の絵描きですから、すべて手で描きました。ペンや色鉛筆で焚き火や星を描き、絵筆で夜を描きました。これは私の職人としての流儀であり、エルメスがつねに尊重し守り続けている美しい道具を私も使っています。

      ©︎ Alice CHARBIN

      エルメスの今年のテーマは「ドローイング−描く−」です。なぜドローイングがエルメスのDNAに深く根付いているとお考えですか?

      エルメスとはひとつの家族のような存在、オブジェや物語に対して興味や関心を共有する人々の集まりです。それぞれは異なる個性を持ちつつも、制作し、夢を見て、観察し、創造し、ストーリーを語り、守り、伝えていくという点でつながっています。ドローイングはアイディアの出発点であり、それを形づくるための手助けとなり、その価値観を線や色で表現することができるもの。つまりエルメスという家族の一部なのだと思います。

      Alice Charbin

      アリス・シャルバン

      1969年パリ生まれ。イギリスで美術を学ぶ。現在はパリを拠点にイラストレーターとして出版、演劇、パッケージデザイン等の分野で活躍するほか、エルメスの公式サイト(エルメスの翼)では15年間にわたりイラストを提供し、書籍『Hermès au fil des jours』(2019)にまとめられた。近著に『Rita, sauvée des eaux』(2020)がある。

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