細野さんと映画の話
今月のランタンエルメスでは、音楽家の細野晴臣さんに選んでいただいた映画3本を銀座メゾンエルメス10階のプライベートシネマ「ル・ステュディオ」にて特別上映いたします。細野さんが「ル・ステュディオ」で出会った名作やドローイングから想起したストップモーションのお話をお届けいたします。

サタジット・レイ監督の『音楽サロン』(1958年)が観られるというので、はじめて「ル・ステュディオ」に行きました。『音楽サロン』は表立って劇場公開されず、ビデオなども出てなくて、めったに観られませんから。劇中、登場する老人の歌い手がすばらしく、いま、ああいう歌を歌える人はいないので、ちょっと興奮しちゃいましたね。音楽の極意を見せられたような感覚で、力が湧いてくる。インド映画っていうとみんな踊って歌うような映画しか知らないですから。それにしても、本当によく『音楽サロン』を探してきてたなと。しかも、ここ「ル・ステュディオ」でしか当時は観られないものでしたからね。公益資本主義っていうのでしょうか、いまの時代、このような場所の提供は数少ないですよね。

――「ドローイング」から連想した作品。
1970年代後半以降はハリウッドの大作が月に一度はあるわけですよ。オールナイトがあった頃で、銀座の『テアトル東京』、渋谷の『パンテオン』でやっていて、行けば同世代の知り合いがみんないるんです。舞台の袖で寝転んで観ていたり、自由な世界でしたね、あの頃って。いまではレンタルビデオもなくなって、古いものはレンタルで探して観るのが好きだったんだけど、なくなったから観なくなっちゃった。だから、最近はまた映画館に行くようになったんです。渋谷の『シアター・イメージフォーラム』とか『シネマヴェーラ渋谷』とか。まだ行けてないけど、『シネマヴェーラ』ではドイツのエルンスト・ルビッチ監督の特集とかやっていて、どうしても行きたいんだけどなかなか行けない。
それで、ドローイングと聞いて思い出したのはストップモーションの世界ですね。つい去年くらいに『イメージフォーラム』で観た『オオカミの家』(チリのクリストバル・レオンとホアキン・コシーニャの作品)もほとんどドローイングなんですよ。アートアニメーションというか、コマ撮りの積み重ねによるストップモーションの世界。カメラによる絵画なのかな。描かれたドローイングが長回しで動き出したりするんですけど、普通とちょっと違うんですよね。

細野さんが紹介する映画3本を「ル・ステュディオ」にて10月に特別上映いたします。銀座メゾンエルメスのプライベートシネマ「ル・ステュディオ」にぜひお立ち寄りください。
10月6日11時より予約を開始します。
※おひとり様1回のみご予約いただけます。
※1回の予約で2名様までご予約いただけます。
※満席の場合にはご予約いただけませんが、当日キャンセルのあった場合は、会場にて先着順でご鑑賞いただけます。(上映時間5分前に会場に直接お越しください)
※上映会は、中学生以上の方にご参加いただけます。
INFORMATION
2025年10月24日〜31日 ※29日を除く
11:00~/14:00~/17:00~
映画『ぼくの伯父さん』
監督:ジャック・タチ
1958年/フランス=イタリア/116分/カラー/ブルーレイ上映
※上映はフランス語音声・日本語字幕となります。
映画『許されざる者』
監督:クリント・イーストウッド
1992年/アメリカ/131分/カラー/ブルーレイ上映
※上映は英語音声・日本語字幕となります。
映画『オオカミの家』『骨』
監督:クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャ
2018年, 2021年/チリ/74分, 14分/カラー、モノクロ/ブルーレイ上映
※2作上映となります。
※上映はスペイン語、ドイツ語音声・日本語字幕となります。
銀座メゾンエルメス10階「ル・ステュディオ」
東京都中央区銀座5‐4‐1
03-3569-3300 (受付時間10:00~18:00)
※エルメス銀座店の営業は11:00~19:00(期間内無休)
Haruomi Hosono
細野晴臣
1947年東京生まれ。音楽家。1969年「エイプリル・フール」でデビュー。1970年「はっぴいえんど」結成。73年ソロ活動を開始、同時に「ティン・パン・アレー」としても活動。78年「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」を結成、歌謡界での楽曲提供を手掛け、プロデューサー、レーベル主宰者としても活動。YMO散開後は、ワールドミュージック、アンビエント、エレクトロニカを探求、作曲・プロデュース・映画音楽など多岐にわたり活動。